【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
今、皇太子は自分なのだと自白すればどうなるだろうか。
短い時間のあいだに思案を重ねる。
だが同じことを何度も繰り返し悩んでは、浮かんでくる答えはいつだって同じだ。
——俺に怯えて、もう愛らしい笑顔を向けることはなくなるだろう。
皇太子が怖いと、目の端にも映りたくないとまで言っていたのだから。
「ジルベルト。あなたは皇族なのですよね?
漆黒の礼服と鷲のブローチは皇族の証だと聞きました。帝国の皇子は三人……もしやあなたは、そのうちのお一人なのではありませんか?」
「俺は———」
ジルベルトの手に包まれたままのマリアの拳に、ぎゅ、と力がこもる。
ぐ、と握り返すジルベルトは、気が気でない。
この緊張が手のひらを通じて伝わってしまうのではないかと。
「俺は第三皇子、ジルベルト・クローヴィスだ。だが、今は……」
脳裏に、ふと違和感が持ち上がる。