【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
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「リズロッテ様っ!」
重い足取りでサロンを出たリズロッテを呼び止めたのは。
部屋が隣同士の公爵令嬢、エミリオ・アン・ジャレット。リズロッテの数少ない理解者の一人だ。
エミリオの後ろには、後宮に来たばかりのフィフィー・フォン・ライラックが両手を胸の前に組んで遠慮がちに立ち、リズロッテの顔色を伺っている。
「エミリオ様……それにフィフィー様も。どうかされましたか?」
「先ほどは殿下がいらして。緊張してお茶もろくに飲めなかったでしょう? これからフィフィー様との親睦を兼ねてテラスで仕切り直すのですけれど、リズロッテ様もご一緒にいかがですか?!」
あろうことか皇太子を自ら誘った事で、リズロッテに向けられた冷ややかな失笑と軽蔑にも似た敵意は凄まじかった。
落ち込んでいるのではと、エミリオが気遣ってくれているのがわかる。気持ちが沈んでお茶の気分どころではないけれど、その気遣いを無碍に断るのも気が引けた。
「ええ……そうね、ご一緒させてもらうわ」