【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
「皇太子殿下は美しい方ですけれど、いつもあんな感じ……なのですか? ロザンヌ王女のお菓子の一件には驚いてしまって」
「フィフィー様はご存知ないかも知れませんが。後宮の淑女に関わらず、夜会や舞踏会でも近寄ろうとする女性をことごとく跳ね除けるのがジルベルト様です。大公夫人が心配なさって、今日の後宮を作り上げたという噂があるくらい。ですからっ……リズロッテ様も気になさる事はありませんわ!」
「エミリオ様、有り難うございます。変な気遣いをさせてしまうわね。わたくしはこの通り二年近くも後宮にいますもの。殿下に突き放されるのには慣れています。ぜんぜん平気よ?」
身を斬られたような落胆と痛みを隠し、リズロッテは軋む心を自ら慰めるように言い聞かせる——殿下は噂通りの『女嫌い』。誘いを断られるのは当然の事——。
「それが……! お二人に聞いていただきたいのですけれどっ。わたくしの学友だった者が獅子宮殿に出仕していたのですが、今日から後宮に異動になって。今朝、挨拶に来た時にこっそり教えてくれたのですけど、」
エミリオが周囲を警戒するように頭を低くする。いわゆるヒソヒソ話の姿勢になって頬を寄せた二人に囁いた。