【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

 ——商会とは、簡単に言えば規模の大きなお店のことですよね。
 わざわざそのお店に出向いて、ジルベルトは何を買うのかしら。

「船とか、お城とか……」

「ン?」
「ぁ、いえっ、何でもありません」

 広大な広場に沿って円を描くように立ち並ぶ白亜の建築物の壮麗さは圧巻で、帝国の富と繁栄を容易に想像させるほどのものだ。

「三年ほど前までは厳戒態勢が敷かれていて、帝都民がこの場所に立ち入ることは出来なかった。だが政策を見直してからは、ここも随分と賑やかになった」

 それらの建物の整然さにそぐわぬ小さな子供たちが、広場の地べたに座って円陣を組んで遊んでいる。
 広場の警備を担当する警吏だろうか。簡易なスツールに腰を下ろした制服姿の青年が二人、子供たちを見守りながら談笑していた。

 巨大な騎士の像の足元に腰をかけて、弁当を広げている親子もいる。裕福そうな者もいれば、そうでなさそうな者も見受けられるが——マリアはある事に気が付いた。
< 285 / 580 >

この作品をシェア

pagetop