【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

 ——そういえば。帝都(ここ)に来てから、まだ一人も浮浪者を見かけていない。

「あの、帝都に浮浪者はいないのですか?」

 ジルベルトは良いところに目を付けたと言わんばかりだ。

「帝都における特異な国民政策によるものだ。浮浪者となりうる貧民を含め、災害などで家を失った者や貧しい者たちを一時的に保護し、仕事を斡旋しながら施設一帯に集めて生活をさせている」

「保護施設、ですか?」
「帝都の民たちには、どんなに貧しくとも最低限の食事と住む場所を与えられる。身寄りがなく、戦争で手足を失って働けなくなった者たちも、望めばそこで暮らすことができるんだ」

「ずいぶん、手厚いのですね」
「我が帝国のために命を賭けてくれた者たちだからね」

 マリアは首を傾げてしまう。
 マリアがシャルロワにいた頃に耳にした帝国の政治とは、かけ離れているからだ。
< 286 / 580 >

この作品をシェア

pagetop