【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!

 ジルベルトが言わんとすることを、マリアとて理解ができる。
 ジルベルトは何も話さないが、下女出身のマリアを『お茶役』に据えている事を、周囲は快く思っていないはずだ。

 ——ジルベルトは皇子殿下だもの。きっと周りからの酷い風当たの中にいるのね。

「本当にお気持ちは嬉しいのですが……。もうこれ以上、あなたにご迷惑をおかけするわけにはっ」

 ジルベルトはマリアの言葉に被せるように言う。
「答え合わせの返事を待っているよ」

 マリアを腕の中から解放すると、優しい瞳がとても綺麗に微笑んだ。

 ジルベルトの心遣いは嬉しかったけれど、答え合わせをすれば、本当の素性を知られてしまうことになる。
 一時的とはいえ窮地から逃れられたと言うのに、マリアの胸の苦しさは少しもおさまらないのだった。

「来月の初めに皇城で帝国主催の記念式典が催される。その日に、マリアを皆に紹介しようと思っている」

「ぇ……」
「ふっ、驚いた?」

「お、驚くも、何も……私はとても、あなたたにご紹介いただくような立場では……っ」

 ——フェルナンドが何と言うかわからぬが。
 マリアの素性を尋ねておきながら、俺自身の正体をいつまでも隠しておくわけにはいかぬだろう。

 ジルベルトはある決意を固めていた。
 フェルナンドをはじめ、誰にも相談する事なく決めた事だ。
 
 ——式典の舞踏会で、《《皇太子は俺だ》》とマリアに打ち明ける。

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