【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
 これまでリズロッテや後宮の女性達に見せていた皇太子の冷徹な眼差しは何だったのだろう。
 あんなふうに甘やかで優しい微笑みなど、ただの一度も見せたことがない、それなのに。

 背中から身震いがして、幻でも見せられているのかとさえ思った。
 
 ——絶対におかしい。
 あの女はやっぱり魔女よ、魔女の媚薬を使って殿下を惑わせたの……そうに違いない……!

 リズロッテが冷たい汗をかいている間に、皇太子は宮殿の方に颯爽と消えてしまう。
 残された女は何を想いながらそうするのか、時が止まったように茫然と青い空を見上げていた。

 女の腰にまで届く長い髪が風に揺れている。
 薄桃色の髪が日の光に照らされて艶やかに輝く。

 ——待って。
 あの髪は……珍しい色。
 わたくしは昔、あれと同じ髪色を持つ者を見たことがある。

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