【コミカライズ連載中】➕SS 雲隠れ王女は冷酷皇太子の腕の中〜あなたに溺愛されても困ります!
《《その子》》も、あの女と同じアメジストの瞳だった。
 わたくしはどこで、そう……あれは確か、そうよ、そうだわ……。

 にわかに甦える鮮明な記憶の断片。
 金色に実る穀物が延々と続く農地を、まだ幼年だったリズロッテは両親とともにひたすら馬車に揺られていた。
 あの日、両親と他国を訪問した時の記憶を懸命にたぐり寄せる。

 親たちの言いつけを破り、王宮のそばの裏ぶれた離宮に、王族の友人たちと一緒に戯れと興味半分とで忍び込んだ時だった。
 こっそり覗き見た、一条(ひとすじ)の日の光が差す書庫室に、まるで人形のようにきちんと座って本を読む愛らしい少女がいた。

 それを見た時、幼心(おさなごころ)にリズロッテは、イチゴの果実に似た髪色がとても可愛い、あの色が羨ましいと思ったのだ。
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