花婿が差し替えられました
「要するにね、最初にルイーズ王女殿下が嫁ぐはずだったのはテルルだったから、護衛騎士を狙っていたクロードはテルル語を勉強していたんですよ」
レイモンは自慢げにそう話した。
アリスは黙って彼の話を聞いている。

「それに、先日の夜会ではずいぶんと上手なダンスを踊っていたようですが、それについても色々噂があるのを知っていますか?」
「噂…、ですか?」
「クロードのやつ、毎晩王女殿下のダンスレッスンに付き合わされているようです。まぁ、付き合わされてるのが純粋にダンスだけかどうかは知りませんが。王宮侍女たちの、もっぱらの噂ですよ」
たしかに結婚披露宴ではほとんど踊れなかったクロードが、先日の夜会では華麗なダンスを披露した。
なるほど、王女のダンスレッスンのパートナーになっているなら納得がいく。

「まぁ、ルイーズ王女はクロードの初恋の人ですしね」
レイモンが最後に漏らした言葉が、その後ずっとアリスの耳にこびりついて離れなかった。
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