黒瀬くんは、"あの"一匹オオカミちゃんを一途に溺愛したいらしい。
「次は酸性で同じように試してみてください。アルカリ性との違いや変化など、詳しくノートに書きこんでおくように。あとで発表してもらいます」
「じゃあ次、俺やるね」
理科の先生の声掛けに、黒瀬真中は新しいフラスコに手を伸ばす。
細くて長い指が、目の前にあるそれを奪っていった。
席を立った黒瀬真中は、嫌みなほど身長が高い。
黒板と教科書を交互に見ながら、同じく危なげな液体を混ぜる姿は、なんだかすごく……腹が立った。
「あ、あとさ」
「もう話しかけてくるな。集中して混ぜろ」
「俺、チャラくないからね」
「…………は?」
「チヨちゃん覚えてないの?俺と初めて目を合わせて喋った会話が『うるさい!二度と話しかけてくるな、このチャラ男め!』だったでしょ」
「間違ったことは言ってないだろ」
「いや、間違ってるよ。本気で好きになった女の子には俺かなり一途だから」
「いや、チャラい。チャラッチャラだ」
「もうめちゃくちゃ愛しまくるから」
「うるさい頑固者。お前はチャラ男代表だ。黙って認めろ」
「うーん、困ったなぁ」