黒瀬くんは、"あの"一匹オオカミちゃんを一途に溺愛したいらしい。
「チヨちゃんさ、俺のこと嫌い?」
「よく分かってるじゃないか、大正解だ。あとその名前で呼ぶな」
「うん、だってチヨちゃんと目が合うたびに睨んでくるから」
「睨んでるだけじゃない。よく見ろ、毎回舌打ちもしている。次その変な名前で呼んだら殴るからな」
「もっと見ていいの?」
「……」
「……」
「気持ち悪いヤツだな、お前は本当に!」
「アッハハ!顔赤いよ、チヨちゃん!照れてるでしょー!」
こんなヤツのどこが人気者なのか、冷静に考えてみてもサッパリ分からない。
話は噛み合わないし、何を考えているのかさえ不明だ。
だいたい、誰一人近づいてこようとしない私のような人間に、こんなふうに平気で話しかけてくること自体、まともなヤツではない。
いつまでもニコニコ笑っていて、どこまでも気味の悪い男だ。