その恋、まぜるなキケン

忠告

その日、旭が杉本組の事務所を出ると、これまで何度も見かけたことがあるスーツの男が道路の向こう側からこちらを見ていた。


旭が歩き始めると、男も同じ方向へ歩き始める。


どうやら旭に用があるらしいことはすぐに分かった。


彼は警視庁の刑事・椎名綾人。


旭は2年前の例の事件以降、ずっと彼に張り込まれている。


始めこそ、この的外れで執拗な張り込みに苛立ち、うんざりしていた。


しかしこの頃は、その執念深さにむしろ感心している。


ぜひとも気が済むまで自分を調べてくれ。


そして早く真犯人が別にいることに気づき、さっさとアイツを裁きにかけてくれ。


旭はそう思っていた。


旭は仕方なく、わざわざ裏路地に入り男がこちらに来るの待った。
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