ー野に咲く花の冒険譚ー
「その自慢の腕で切り倒してくれねぇか?」
わざわざ労働させようなんて。
タルトは僕の不満顔に,きょとんと瞳を合わせた。
「家の材料にすりゃ一緒だからよ,一思いに倒して欲しんだわ。頼まれてくれるってんなら,いくらかうちの野菜なんかもただでやるからよ」
「いや,それくらいならすぐ終わる。そこまでしてくれなくても……」
「受け取っておけタルト。無償の労働なんてろくなものじゃない。お互い対等でいるためにも,それくらいは当然だ。寧ろ安いくらいだな」
何度も僕を引き下がらせたタルトの頭を,今度は僕が上から強く押さえつける。
信じられないと無理矢理黙らせ男を見れば,男はアホみたいにただ楽しげに笑っていた。
「若ぇなぁ」
そう眩しげに僕達をみた男が,僕は理解できなかった。