ー野に咲く花の冒険譚ー
「あやめ,お前自分のフルネームなんて覚えてないだろ。お前は今日から,アヤメ=マリア·エレクトロだ。名字だけじゃなく,名前もやる」
それ以外にしてやれることはない。
僕はボロい窓の枠に足を掛ける。
みしりと音がしたけれど,壊れる前に飛び降りる。
万が一にも死なないよう,呼吸の道を確保し,下よりもあやめを見つめた。
まだ死んでない,蕾は発現していない。
この飛び降りも,助かると分かっているから攻撃にはならない。
そもそも1ヶ月たっているか分からないから,攻撃はないかもしれないけれど。
この子は2ヶ月前に発病したことにしよう。
じゃなきゃ僕みたいに命を脅かされる。
普通の花つきでしかないあやめは確実に死ぬ。
考え終わる前に,僕は花の力を借りて着地した。
すっかり,端から見れば自分の意思で動かし使いこなしているように見えるだろう。
実際は性質を利用しただけの自殺みたいなものだ。
家でも高いところから物を取った後はこうして飛び降りればよかった。
ゴミの持ち腐れは救いようがない。
後ろに降りた僕に,僕の許可より前に踏み入っていたリーダーや隊員達は揃って振り向いた。