ー野に咲く花の冒険譚ー


「お前も死にたいか? ……だが,そうだと言われても,僕には応えられない。お前の将来よりも,兄の心を,僕は守りたい」



抱き抱えると,小さな少女は笑い,疲れたような顔でまた眠った。

このままだと,こいつも死ぬ。



「はーー。……どうして」

「ジョンー!!!! どうしたの? 終わったの? 入るよ,大丈夫なの?!!」



ココの心配そうな大声が響いた。

どう説明すればいいのか,自分のやったことも含めまだ整理がついていないのに。



「ジョセフィーネ! 死んでないなら返事して」



アイザは何故長ったらしくもあの呼び方を好むのか,僕には理解できない。



「ジョン! ジョセフィーネ=マリア·エレクトロ! 倒れてるのか? 入っていいのか?! 返事をしろ,助けられない!!」



僕のフルネーム,自分でも忘れそうになるのに。

あのたった1回で覚えたのか,タルトは。

真っ直ぐだあいつは。

きっと曲がることを知らない。

僕の分からない人の心の動きにも,きっと対応できる。

あいつは最初に子供を助けると言った。

僕の下した決断を,どう思うだろうか。

それしか選べなかった非力な僕を,どう責めるだろうか。

僕はあやめを抱える。
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