青空@Archive
 頭が痛くなる。
(これからこんなアホで好奇心ばっかりやけに強い書渡の面倒を見てけってのか……。歴代の中でも群を抜いてるぞありゃあ)
 また、ため息が出た。
「勘弁してくれ……。俺は守護者であっても子守者(ベビーシッター)じゃねぇぞ」
「お困りのようね、アイ。誰? あのバカな子?」
 いつの間に来ていたのか、後ろから女の声がして藍は振り返った。
 そこには極上の美人が腕組みして立っていた。
 ウェーブがかった長い金髪を頭の後ろで一つに結わえ、ポニーテールにした、色白の若い女。
 深みに気品を湛えた青い大きな瞳は、どこか楽しそうにこちらを見つめている。
 服装はふりふりなフリル付きのスカート……などではなく、茶色のショートパンツに黒のチューブトップといった露出度高めな大胆な格好に、ポンチョのような大きな布を斜めに纏っている。
 そして極めつけは彼女の背丈を超えた、格好に似合わない大きな灰色の無骨な銃身と、両腰のホルスターに納まった二丁の鉄の塊。
 軽々と襷に背負った二メートルもの対戦車ライフルと、両腰のホルスターに差した二丁のダブルアクション回転式拳銃。
 “素人が撃てば肩の骨が砕ける”と言われるシモノフと、熊すら楽に仕留める二丁のM29だ。

 個人にしては火力が強すぎる重武装をした装備の、ちぐはぐな格好をしたこの女が『不思議の国のアリス』の主人公――アリス・リデルだ。
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