「お飾りの役立たずは不要だ」とクズ皇太子に婚約破棄された大聖母、隣国の王子に(契約)結婚しようとスカウトされる~あなたが本当に愛する人と幸せになるよう大聖母から悪女にポジションチェンジしますわ~

ラン、きみだよ。きみなんだよ

「きみが大聖母だったとき、皇宮にある『祈りの間』を出入りしているのを見かけたんだ。きみを見た瞬間、『ビビビッ』ときた。とてもつもないしびれが体中を駆け巡った。『これこそが運命の出会いだ』と直感した。だから、すぐに外交の担当国をウイルクス帝国にかわってもらった。それ以降、出来るだけ帝国ですごすようにした。朝夕、きみが『祈りの間』に出入りするのを時間が許す限り見守った。が、きみはあのおろかな皇太子の婚約者。彼が愚かなクズで、いずれ自滅することはわかってはいた。しかし、外交官としても第五王子としても、それまではどうしようも出来ない。ただだまってきみを見守るしかなかった。そのかわり、いつかきみがあの愚かきわまりない皇太子に婚約を破棄されるか、あるいはきみが愛想を尽かして婚約破棄を申し出してもいいように、準備だけはしておいた。きみがここですぐにでも生活出来るよう、部屋を確保した。その上で、きみが不自由しないよう必要な物を揃えておいた。じつは、おれはこの主寝室を使っていたわけではない。そのように決心した際にたまたま続き部屋のあるこの部屋が空いていたので、頼みこんで移ったんだ」
< 210 / 227 >

この作品をシェア

pagetop