12上の御曹司と女子高生は愛を育めない
「愛してるよ」
突然すぐ近くに近づいた整った顔を持つ男が、良い声で言葉を発した。
ドラマでも見てるのだろうか、と一瞬意識が逃避しかける。
「紫央里、聞いてるのか」
「すみません、聞こえたはずなんですけど理解できませんでした」
「あー、お前が思ったよりこういうことにテンパるのは理解した。慌てなくて良い」
腹立たしい気持ちが条件反射のように起きたが、落ち着けようとしてくれるのかもう諦めたのか光生さんは苦笑いしている。
あまりに色々経験してないことが起きて、あまり現実味も無いのだから。
「俺は恋というのではなく愛の方だろうな、紫央里に関しては。
だからこそ側に居て欲しい。
愛していなければ、こんな年齢の男が12も下の女子高生に告白するか」
開き直ったように、それも偉そうに腕を組みながら言うのだからあっけにとられた。
そしてそんな光生さんと目が合って何故か笑いがこみ上げる、それも二人同時に。
良いのかな、まだ自信は無いけれど、ここまで言ってもらえる、そして何よりもっと光生さんを知りたいと思う自分がいる。
それに正直になって見たくなった。
「まだ正直自分の気持ちが良くわかっていません」
光生さんは組んだ腕を降ろし私に向き合う。
「ただ光生さんをもっと知りたいと思う気持ちで付き合っても良いでしょうか」
胸がどくどくと音を立てる。
自分の話す声より耳に響いて、その音がこの静かな車内ではとっくに聞こえているのではと思うほどに。
そんな私を見て光生さんは表情を緩めた。
なんというか、可愛い、そう思える笑顔。