甘い香りが繋ぐ想い
初めて訪れた遼河の研究室。
壁際の棚には、当たり前だが、社会心理学や人間科学に関する書籍がズラリと収められている。
整理整頓された清潔感のある部屋だ。

「適当に座れ」

「あ、はい、失礼します」

部屋の中央に置かれたソファーに腰を下ろした。
向かい合わせのソファーに遼河も腰を下ろす。

「フレグランスといったな?」

「はい」

「別に何も使っていない」

「え?」

「どうした?」

「そんなはずはないかと……」

「なぜ?」

「今もですが、先生はとても甘い香りがします」

「…まさか……」

遼河は呟き、険しい表情を浮かべた。

「先生?」

遼河は、長く浅い息を吐き、真夢を見つめる。

「君か、君なんだな」

「え?」

「単刀直入に言う。君は、私が探していた女性だ」
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