甘い香りが繋ぐ想い
隠された真実
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「おそらく君は、松姫だ」

案の定、真夢は首を傾げ、瞬きを繰り返している。無理もない。突然松姫だと言われても、なんのことやらさっぱりだろう。

だが、遼河は少々期待していた。自分のことを探し当ててくれたのではないのかと……

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1582年 天正10年 6月2日 

妙覚寺を宿にしていた織田信忠は、本能寺にて、父、織田信長が明智光秀によって包囲されたと報告を受け援助に向う。
しかし、本能寺が焼け落ちたと聞き、二条新御所に入った。逃げることもできたが、敵に背を向け逃げることなど後世の笑い者だ。汚名を背負わされるのならば、潔く腹を切って散ろう。燃え盛る炎の中、信忠は死を覚悟した。

しかし、一つだけ、たった一つだけ、心残りがある。

松姫だ。

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