甘い香りが繋ぐ想い
憧れの人
◇◇◇◇◇

照りつける太陽がジリジリと肌を焼き、身体中が汗で滲む。

こんなにいい天気なら、織姫と彦星はきっと逢えるよね

夢見がちな女子大生、三雲真夢(みくもまゆ)二十歳は、胸に抱えたテキストをギュッと握りしめた。

あまりの暑さに日陰へと避難し、忍ばせていたハンドタオルで額や首筋の汗を優しく拭う。

辺りを見回すと、色とりどりの浴衣を着た学生たちが、大学構内を行き交っている。

真夢の通う大学では、七夕に毎年浴衣まつりが開催され、学生が思い思いの浴衣姿で一日を過ごすのだ。
祭りといっても出店などはなく、浴衣を着ていること以外は授業もあり、通常運転だ。
それでも、特別な日であることに変わりはないので、心なしか大学全体が浮かれているように感じるのは、真夢だけではないだろう。
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