甘い香りが繋ぐ想い
真夢も、大学一年生の時に買った浴衣を着回し、講義室に向かう。

家庭教師のアルバイトで稼いだなけなしの貯金で買った少々お高めの浴衣だ。
紺の染め生地に朝顔が描かれた柄は、派手さはないが、白帯にすることでとても爽やかな印象になる。一目で気に入り迷うことなく購入した。

悪戦苦闘しながらも自分で着付けた浴衣を纏い、編み込みを後ろでまとめた姿で、レトロな校舎の廊下をしとやかに歩いてみる。

上品に見えるかな?

前方から近づいて来る浴衣姿の男性を目にした瞬間、胸が高鳴った。

西門遼河(さいもんりょうが)社会心理学教授。

真夢は密かに想いを寄せている。
一目惚れだ。
遼河から漂う甘い香りは、真夢の全てを刺激する。

高身長でスラリとした長い四肢。色素は薄く、透き通るような肌を持ち、顔立ちも美しい。寝起きのような気怠そうな低い声は、色気がだだ漏れだ。
もしかしたら、感情を持ち合わせていないのではないかと心配してしまうほど無表情なのだが、真夢の心配など無用。
何故なら、遼河の左手薬指には、シルバーリングが存在を主張しているからだ。
きっと、感情どころか、愛情も持ち合わせている。

彼を射止めた女性。彼が射止めた女性。いったいどんな人なのだろう……
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