甘い香りが繋ぐ想い
【私生活の見えない年齢不詳のミステリアス】

このキャッチコピーのような彼のイメージは、大学内で浸透している。

スラックスにワイシャツといったいつものシンプルな出立とはうって変わって、黒い浴衣を着こなした目の前の遼河は、ただでさえだだ漏れの色気が、漏れどころかとめどなく溢れ出していた。

心音が聞こえてしまうのではないかというほど、真夢の鼓動は激しく脈打つ。

火照った顔を隠すように会釈した。

甘い香りを漂わせ、遼河は真夢の横を、言葉を発することなく通り過ぎる。

顔を上げた真夢が、遠ざかる遼河の後ろ姿を見つめていると、微かに残っていた甘い香りが、真夢の鼻腔をくすぐった。

遼河の姿が見えなくなると、見知った女性が真夢の視界に入る。

「真夢!」

親しげに手を振る女性は、10歳年上の北原瑠璃(きたはらるり)
背が高く、モデル並みのスタイルと容貌を兼ね備えたバリキャリ。
彼女とは実家が隣同士で、真夢のことを妹のように可愛がってくれている。

真夢も笑顔で手を振り返した。
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