甘い香りが繋ぐ想い
瑠璃の話によれば、両親に随分な仕打ちを受けているようだった。

再婚で血の繋がらない娘より、自分の腹を痛めて産んだ子の方が可愛いのはわかるが、度を超えているように思えてならない。

学費は出さないが大学には進学しろなど、意味不明だ。それに、実の父親は何をやっているんだ!あまりにも理不尽な扱いに憤りを覚えた。膝に置いた拳に力が入る。 

「先生、私はもうこれ以上真夢に傷ついてほしくありません。あの子には幸せになってもらいたいんです」

「君は、本当の姉のようだな。彼女にとっても、君は、きっと大切な存在なんだろう」

瑠璃の険しかった表情が少しだけ緩む。

「北原さん、ありがとう」

「え?」

「話してくれて感謝する。彼女に幸せになってもらいたいのは、私も同じだ」

「先生、何があっても、真夢の味方でいてくれますか?」

「もちろんだ。約束する」

瑠璃は深々と頭を下げ、遼河に背を向け立ち去った。
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