甘い香りが繋ぐ想い
想いの行方
◇◇◇◇◇

『私を信じてください』

それだけを伝え、真夢は逃げるように出て来てしまった。

研究室から遠ざかると壁にもたれかかり、忙しなく動く心臓をギュッと押さえつける。

私が松姫……
私のことを愛している……

思い出すと、益々心臓が暴れ出した。

織田信忠と松姫の悲恋は知っていた。
小学6年生の歴史の授業で、担任が目を輝かせながら語って聞かせてくれたことをよく覚えている。その時、何故か胸が苦しくなり、織田信忠と松姫のことをもっと知りたいと、後で詳しく調べたのだ。
なので、遼河の告白には正直驚いた。信じられず途中まで半信半疑で聞いていたが、それは事実なのだと確信する。

遼河はこう言っていた。

『そうじゃな。我も、探し出してみせようぞ。何十年、何百年かかろうとも、必ずそなたを見つけ出す。しばしの別れじゃ』と。

その時真夢は時々見る夢を思い出した。今日も見た夢。

『私も、探し出してみせる。何十年、何百年かかろうとも、必ず君を見つけだす。それまで、しばしの別れだ』

これは、信忠が松姫に言ったものと同じ内容だ。

西門遼河が織田信忠で、真夢が松姫。
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