甘い香りが繋ぐ想い
遼河はほぼ全ての料理を、美味しいと言って食べてくれた。けれど真夢は気づいたことがある。

どうやら、酢豚に入っているパイナップルは苦手なようだ。パイナップルだけを避けていた。
あまりにも丁寧に避けるので、思わずクスッと笑ってしまった。


「先生、コーヒー淹れますけど、飲まれますか?」

「そうだな、いただこう」

「ミルクとお砂糖は?」

「欲しい」

てっきりブラックだと思っていたので意外だった。ミルクも砂糖もたっぷり入れたコーヒーをスプーンでかき混ぜる姿が可愛くて、またクスッと笑ってしまった。

こうやって一つ一つ、遼河のことを知っていく度に喜びを覚え、心が満たされていく。

コーヒーを一口飲むと、遼河がおもむろに真夢を見つめた。

「何故会いに来なかった?」

低く艶のある声に心臓がドクンと跳ねる。

「自立するまで会ってはいけないと思いました。先生と学生という立場だし、しかも、先生は既婚者だと思われているし、変な噂がたったら嫌だから」

「そうか……すまなかったな」

「どうして先生が謝るんですか」

「いや、君にそこまで気を使わせていたとは……」

「先生」

「ん?」

「寂しかったですか?」

「寂しくなかったと言えば嘘になる」

「うふふっ、でも、今まで400年も待っていたんですから、2年半なんて楽勝でしょ?」

「君という人はまったく……」

遼河は困ったように目尻を下げた。

「楽勝なんかじゃない」

「え?」

「君に会いたくてたまらなかった」

「先生……」

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