甘い香りが繋ぐ想い
遼河が大学教授の職を辞した頃、真夢の体調にも変化が現れる。何をするにも息が上がり、思うように身体を動かせなくなった。それに、すぐに咳き込んでしまう。原因は不明のままだ。
遼河は真夢を気遣い、空気の綺麗な避暑地に家を買った。おとぎ話に出てくるような可愛らしくて小さな家だ。庭にはたくさんの植物を植え、自家製の紅茶を味わいながら、本を読んだり、絵を描いたり、のんびりと暮らした。
それでも、やはり、寿命はやってくる。
遼河は真夢の手を握り、柔らかい眼差しを向け、真夢の髪を優しく撫でながら、真夢の名を呼んだ。
「真夢」
甘い香りに包まれて、遼河を全身で感じる。
私の人生は幸せだった。
はっきりそう言える。
けれど、一つだけ、たった一つだけ、心残りがある。
遼河だ。
「先生……」
真夢は最後の力を振り絞り、遼河の手を握り返した。
遼河は真夢を気遣い、空気の綺麗な避暑地に家を買った。おとぎ話に出てくるような可愛らしくて小さな家だ。庭にはたくさんの植物を植え、自家製の紅茶を味わいながら、本を読んだり、絵を描いたり、のんびりと暮らした。
それでも、やはり、寿命はやってくる。
遼河は真夢の手を握り、柔らかい眼差しを向け、真夢の髪を優しく撫でながら、真夢の名を呼んだ。
「真夢」
甘い香りに包まれて、遼河を全身で感じる。
私の人生は幸せだった。
はっきりそう言える。
けれど、一つだけ、たった一つだけ、心残りがある。
遼河だ。
「先生……」
真夢は最後の力を振り絞り、遼河の手を握り返した。