甘い香りが繋ぐ想い
※※※※※

真夢との生活は、陽だまりに包まれたように穏やかで、温かいものだった。

遼河(信忠)の意向で籍は入れずに事実婚という形にはなってしまったが、真夢はずっと傍にいてくれた。

支援学校での子どもたちの様子を話してくれる度、自分の子どもを抱かせてやりたいと気持ちが焦ったこともある。
だが真夢は、そんな遼河(信忠)の胸の内などお見通しだった。

「先生、赤ちゃんができないのは、きっと親ではなく、恋人同士でいなさいと、神様が言っているんだと思います」

そう穏やかに笑って優しく遼河(信忠)を抱きしめてくれたのだ。

聖母のような真夢への想いは日を追うごとに強くなる。
真夢の願うことは全て叶えてやりたい。真夢の喜ぶ顔が、遼河(信忠)の喜びでもあった。

真夢への想いが強過ぎて、出張で留守にしてしまった夜は、どうしても紳士ではいられず、激しく真夢を求めた。そんな遼河(信忠)の愛に、真夢も応える。透き通るような美しい肌、整った容貌、艶のある吐息、甘い声、真夢の全てが欲情を刺激し、何度も何度も自分の全てを真夢に注いだ。

愛しくて愛しくて狂ってしまいそうだ。

だが、真夢を看取らなければならない日は必ずやってくる。
その時、気持ちを保っていられるだろうか。
真夢のいない人生を歩んでいけるだろうか。
今まで、こんな不安な気持ちを抱いたことはない。

松姫の生まれ変わりとしてではなく、真夢を愛している。

真夢……
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