冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
すべて実の祖母によって敷かれたレールである。
 
そして実の母である敬子は、同じ屋敷で暮らしていながら息子のことついて口を挟むことを許されなかった。
 
彼の父宗介も企業経営に向いていないと言い渡され、宗一郎のことには意見できなかった……。
 
伝統ある大企業を存続させるためには、必要なことなのかもしれない。

だがひとりひとりが普通の家族ではあり得ない、苦悩を抱えていたのも事実なのだ。
 
母が、泣いている敬子を慰めていたのを日奈子が目撃したことは一度や二度ではない。

「万里子さんと日奈子がいなかったら、九条家はとっくの昔にバラバラになっていただろう」
 
そう言って宗一郎は自嘲した。

「とくに俺と母さんは、万里子さんに頼りきりだったからな。だからこそ万里子さんは、日奈子には俺と結婚してほしくなかった。……だけど、それをストレートには書けなかったんだよ。たとえ日奈子しか見ないものだとしても、やっぱり九条家(おれたち)のことも大切に思ってくれていたから。だからこんな書き方になったんだと俺は思う」
 
思ってもみなかった、意外すぎる解釈に日奈子は啞然としてしまう。でもそんなことはないと言い切ることもできなかった。
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