冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
でも日奈子はガラスに映る彼の姿を確認するのが精一杯で振り向くことはできなかった。
 
宗一郎が、窓ガラスに貼り付いている日奈子を見てふっと笑う。ゆっくりとこちらにやってくる。
 
胸の鼓動がこれ以上ないくらいに高鳴って、痛いくらいだった。

彼と人生をともにすると決めてから、覚悟はしていたつもりだけれど、現実は想像以上の世界だ。
 
このくらいは皆していることだ、大丈夫、落ち着けと自分自身に言い聞かせ、ガラスについた手をギュッと握った時、すぐ後ろまで来た宗一郎に抱きすくめられて息を呑む。
 
自分と同じボディーソープの香りに混じる彼の香りに包まれてくらくらと目眩がするくらいだった。

「怖い?」
 
宗一郎が耳元で囁いた。
 
優しい声音の問いかけに、日奈子は答えることができなかった。

本音を言えば少し怖い。男性経験がまったくない日奈子には、ここからは未知の世界なのだから。

「日奈子?」
 
その場で優しく回されて、向かい合わせにされてしまう。
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