冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
互いに忙しくする中で、顔を合わせるのは月に何回かの遅番の時の迎えのみで、その時間だって最近は、あまりいい雰囲気ではなかったから。
 
その自分の反応に、日奈子は途方に暮れてしまう。
 
ただ笑顔を見ただけで、宗一郎に対する想いが大きく膨らむのを感じたからだ。

意を決して出席した飲み会で、あんなに頑張って知らない人と話をして新しい一歩を踏みだそうとしたのに、この一瞬で振り出しに戻ってしまった気分だった。

彼以上に好きになれる人なんて、この世に存在するのだろうか。
 
一方で日奈子の顔色がすっかり戻ったのを確認した宗一郎は、眉を寄せて口を開いた。


「だけどあんなところでなにをしてた? あの男、あの時たまたま声をかけられたという感じじゃなかったが」
 
このままではお説教が始まってしまう。なんと言うべきか、日奈子は考えを巡らせるが、嘘をつくこともできなくて正直なことを口にする。

「飲み会の帰りだったの。あの人駅まで送ってくれるって言ってたんだけど……」

「飲み会? あの男は知り合いか? そんな風には見えなかったが」

「知り合いっていうか……。の、飲み会で……知り合いました」
 
その言葉で、宗一郎は今夜の飲み会の趣旨を理解したようだ。目を閉じてふーっと息を吐いた。
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