冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
なんだか昼食を買って帰って家の中で食べるのが、もったいないような気分にさえなっている。こんな風に思うのは、随分久しぶりだ。

「家に帰って食べるのが、惜しいくらいの天気だな」
 
日奈子の心を読んだようなことを言う宗一郎に、日奈子は驚いて足を止めた。
 
宗一郎が首を傾げて振り返った。

「どうかした?」

「ううん、私も同じことを思ったから」

「そう、なら外で食べるか? コンビニじゃなくて店に入る?」

「だけど私、この辺りのお店を知らなくて……」
 
またふたりは歩きだす。そんなことを話しているうちに、コンビニに着いた。中に入る前にガラスに貼ってある、あるチラシに宗一郎が目を留めた。

「日奈子、今日この先の公園でハンドメイドマーケットをやってるみたいだ」

「え? ハンドメイドマーケット? ……本当だ」
 
ハンドメイドという言葉に興味をそそられて、日奈子は貼り紙をじっくり見る。

どうやら地元の商店街が主催の催し物で、キッチンカーやストリートミュージシャンも参加するちょっとしたお祭りのようだ。

「楽しそう……」
 
日奈子の口から自然とそんな言葉が出た。
 
ハンドメイドマーケットには高校時代手芸部に所属していた頃に、日奈子も友人と出店したことがある。

自分の作った物が売れていくのも嬉しかったが、ほかの出品者の作品を眺めるのも楽しかった。

中には手作りとは思えないようなものもあったから、作り方を尋ねたりして……。
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