冷徹ホテル王の最上愛 ～天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました～
目を閉じて答えない宗一郎に、さらに美鈴が畳みかける。

「学生時代、彼女に浮気を疑われてカフェでいきなり泣かれた時も眉ひとつ動かさなかったあなたが、仕事中だというのに彼女を目にしただけでフリーズしたんだもの、これは彼女、ただのスタッフじゃないなとぴーんときたわ」
　
そう言って得意そうに笑う。
　
学生時代の話まで持ち出されて、宗一郎はため息をついた。
　
当時付き合っていた恋人に浮気を疑われて学内で泣かれてしまい周囲の注目を集めてしまったという、苦い思い出だ。
　
当時まだ学生でありながら、すでにホテル経営に関わってもいた宗一郎は他の学生よりも多忙だった。

加えて空いた時間で中学生だった日奈子の家庭教師もしていたから、付き合っていた彼女との時間が十分に取れなかったのだ。
　
もちろんそのことは、事前にきちんと説明してそれでもいいと言われたから付き合ったのだが、結局彼女はそれを不満に思い浮気を疑い泣いたのだ。

そういうことは、恋人ができるたびに繰り返されて、あまりひとりの女性と長続きしなかった。

「確かに、彼女とは個人的に親しい」
　
仕方なく宗一郎は答える。

美鈴が鋭いのはその通りだ。これ以上ごまかしても意味がないから、とりあえず事実のみを口にする。
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