冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
彼女はなにも悪くない。謝られる必要も、ましてランチをご馳走してもらうなんて……と、そこであることを思い出し口を開いた。

「ご馳走してもらわなくていいんだけど……私あのカフェにまた行きたいな。あのタイ料理の……」

「タイ料理のカフェ? ああ、先月行ったあそこ? なに? 日奈子、タイ料理にハマっちゃった?」

「タイ料理っていうか、ガパオライスが食べたくなっちゃって」

「わかる! あそこのやつ美味しいもんね!」

「うん」
 
本当は、莉子と行った店のガパオライスがどうだったか、日奈子には思い出せない。でもだからこそまた食べたいと思ったのだ。

「もちろんオーケー! じゃあ、今予定を決めちゃおうよ。えーっとシフトシフト……」
 
ふたりして携帯を取り出して互いのシフトを確認する。

二週間先に、ふたりともの空きを見つけて莉子が指差した。

「あ、ここ、ここ空いてるじゃん。……あ、でも日奈子は夜勤明けかぁ」
 
呟いて莉子はまた別のところを探しはじめる。

彼女は、夜勤明けは日奈子が断ると知っているからだ。

確かにこのスケジュールで莉子とランチに行けば、次の日は少し寝不足になりそうだ。以前の日奈子なら断っていた。
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