冷徹ホテル王の最上愛 ~天涯孤独だったのに一途な恋情で娶られました~
* * *
 
「本当にごめん……!」
 
仕事終わりのロッカールームで、莉子が日奈子に向かって手を合わせている。
 
日奈子は慌てて首を横に振った。

「莉子のせいじゃないよ……!」
 
異業種交流会で会った高木の件についてである。
 
日奈子はあれから一度も高木とコンタクトは取っていないが、どうやら他のメンバーは少々親しくなったようで、また集まろうという話になったのだ。
 
それで再度誘われたから、仕方なくあの日起こった出来事を宗一郎のことは伏せつつ話したというわけだ。

「私の方こそなんか水を差すようなことを言ってごめん」

「そんなことないよ。話してくれてありがたい。あの日は皆紳士に思えたけど、そんなことがあったなら、ちょっとまた集まるのも考えなおさなきゃいけない気がする。怖いじゃん」
 
日奈子は無言で頷いた。

高木の友人だからといって全員が同じようなことをするとは限らないが、類は友を呼ぶという言葉もある。気をつけるにこしたことはない。

「もともと日奈子は気が進まないみたいだったのに、私が強引に誘ったばっかりに嫌な思いをさせちゃったね。……今度ランチをご馳走させて?」

「もう、大丈夫だってば……」
 
気が進まなくとも行くと決めたのは自分だし、高木に送ってもらうことを断れなかったのも自分だ。
< 98 / 201 >

この作品をシェア

pagetop