その狂愛からは、逃れられない。
「ママ!」
「花蓮おまたせ」
小さな体を抱き上げる。
まだ短い髪の毛を器用にツインテールにした、大きな目が蓮華にそっくりの可愛らしい女の子。
「おかえりぃー!」
「ただいま」
花蓮と呼ばれたその少女は、蓮華に満面の笑みを向けた。
「今日は花蓮ちゃん、自分からお野菜をもりもり食べて"ママにいいこいいこしてもらう!"って張り切ってましたよ」
「えぇー、すごいね花蓮。偉いよ」
「へへっ、やったあ!」
担任の保育士からの一日の様子を細かく聞き、蓮華は花蓮を抱っこして保育園を出た。
花蓮は、正真正銘蓮華の娘だ。
今ニ歳児クラスに入っていて、あと数ヶ月で三歳になる。
そう、あの時の一夜で光との間にできた子どもだった。
今の旅館で働き始めてからすぐ、つわり症状に襲われた。
素性もわからない蓮華を拾ってくれた女将は長年の勘もあり、見ただけで妊娠してるのでは?と思い当たった。
嫌がる蓮華を無理矢理病院に連れて行き、妊娠が発覚。
それから仕事をしながら出産し、周りに協力してもらいながらシングルマザーとして頑張ってきていた。
何から何までお世話になっている女将にはもう足を向けて寝られないとさえ思っている蓮華は、あっという間に過ぎ行く毎日に、光のことなど頭の片隅からも消え去っていた。
花蓮がいれば、それでいい。
父親はあんなに最低な男だったけど、花蓮に罪は無い。
宿った命は、大切にしたかった。