その狂愛からは、逃れられない。



「……それで、話というのは?」



同時に、自分に向けられる目がそれとは正反対のもので、光はそれに眉を顰める。



「どこか静かに話せる場所に行かないか」



こんな外で、人前で話すような内容では無い。


そう言いたいのだろう。しかしその言葉は蓮華を怒らせるだけのものでしかない。



「……その必要はございません。お話があるのなら、ここでお願いします」



メイドの時の癖が抜けない。四年も経つのに、光の前では思わず敬語になってしまう。


真紀子は気を利かせたのか、花蓮を連れてマンションの中に入って行った。


心の中でお礼を呟いて、目の前の男と対峙する。


母は強しとはよく言ったものだ。四年前とは違い、物怖じしないその力強い目に、光は狼狽た。



「……帰ってきてくれないか」


「お断りいたします」



光の頼みに、蓮華は三秒も置かずに答えた。


それをわかっていたかのように、光は続ける。



「俺は、物心つく前からずっと蓮華のことが好きだったんだ」


「……え?」



それは、蓮華が初めて聞く、光の気持ちだった。


初めて聞く、光の本音だった。



「でも、俺たちはどう足掻いたって一緒にはなれない。どんなに好きでも、付き合うことすらできない。それが悔しくて、苦しくて」



だから他の女で発散した。


そう言った光の頬を、蓮華はありったけの力でビンタした。


乾いた音が鳴り響く。


光はヒリヒリとする頬を押さえながら、蓮華に視線を向けた。

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