狐火
夕焼け


今日もまた、恐ろしいほどの晴天にゆっくりと
鮮やかな橙色がグラデーションされる。



その夕焼けを、じっくりと畑の端から見ている幼子の娘が、
沙雪《さゆき》と言う。




「ねぇ?何故夕焼けはゆっくり染まって行くのじゃ?何故一気に染まらないのかのぅ…」


と私が母様に聞くと、



「沙雪…いい?晴天になるのも、夕焼けになるのも、暗闇になるのも簡単ではないからよ、」

と微笑んで答えてくれた。

私の家はとても貧しくはないけれど、
毎日、こうして母様も畑に出て働く。

家族構成は、父様《ととさま》母様《ははさま》兄様《あにさま》姉様《あねさま》がそして私がいる。


父様は、農夫。
街では結構人気のある野菜を育てている。

母様は、ナル。
ナルとは、薬草や色々な物を混ぜ薬を作る仕事。

兄様は、仕祭《しさい》。
仕祭は、殿に仕える仕事でたまにしか家へ、戻らない。

姉様は、舞手《まいて》。
姉様もまた、有名な舞手で、その美貌から殿に気に入られ、殿城の専属の舞手になった。


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