復讐の鈴蘭〜最愛の婚約者が殺されました〜


 取調室では、乃愛の目の前にあの若手刑事が座る。彼女の緊張をほぐすかのような、優しそうに笑いかける彼は、本当に俳優なのではないかと疑う程だ。


「改めまして、捜査一課の真田(さなだ)幸成(ゆきなり)と申します。よろしくお願いします」

「よろしくお願いします……」

「早速ですが三好乃愛さん、事件のことをお聞かせ願えますか?
婚約者の由利(ゆり)圭介(けいすけ)さんが亡くなられた時、あなたはどこで何をしていたのか」

「っ、私は圭介を殺していませんっ!!」


 乃愛は大声で訴えた。真田はあくまで穏やかに、彼女に向かって言い聞かせる。


「それはこれから調べます。貴方が無実を訴えるのなら、包み隠さず全て話してください。
真犯人を捕まえるためにも」

「……わかりました」


 乃愛は一呼吸置いて、ゆっくりと話し始める。
 あの事件当夜のこと。楽しくて幸せだった婚約パーティーで、最愛の婚約者・由利圭介を失ったあの夜の出来事を。


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