ヒーローは間違えない〜誰がために鐘は鳴るのか〜
「しかし、いい車だね。ユウリくん」

「ええ、海外勤務をしていた際に、知り合いが乗っていたものと同じ車種なんですが、こっちで乗ろうと思って取り寄せたんですよ。お気に召されたようでよかった」

ヒカルを含めた今回の旅の一行は、現在、揺れの少ないリムジンのようなワゴン車に乗っていた。

ユウリの話しぶりからすると、この安心安全設計の車は外車らしい。

運転は、ユウリの秘書?なのか、執事っぽい30代位の男性が行っている。

ヒカルとユウリとは長いこと会っていなかったが、今の話から、彼が海外で活躍していたのならどんな代物がお目見えしても納得だ。

今回の帰国も、おおかた、新之助の会社の危機を聞きつけて、ヘルプするためにユウリが一時帰国したのだろう。

言い換えれば、それくらい、新之助の会社は危ない状況に追い込まれていると言うことだ。

さもありなん。

ヒカルは言葉を発することなく頷いていた。

「ヒカルは自動車の免許は持ってるの?」

突然のユウリからの振りに、ヒカルは瞑っていた目を開いて、となりに座るユウリを見上げた。

「免許は持ってるよ。ペーパードライバーだけどね」

ヒカルは、まだ大学生だった頃に自動車の普通免許を取った。

『免許を取ったらお母さんをドライブに連れて行ってあげるね』

『まあ!楽しみにしているわ』

普段から病弱だったヒカルの母は、貢の会社が危うくなった頃に心労も祟り、一気に病状が悪化した。

会社が持ち直すと同時に、病状も落ち着いたかと思われたが、闘病のかいなく、ヒカルの自動車免許取得を確認してすぐに、天国へ召されていった。

「そういえば、乗せたい人がいなくなっちゃってからは、ずっと運転してなかったかも」

ぼんやりと窓の外の青空に目をやったヒカルの手を、ユウリがそっと握ったことに、思い出に浸るヒカルは、しばらく気付かなかった。


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