鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される
「わっ、ちらし寿司だっ!」
「たまにはこういうのもいいかなと思って」
シャワーを浴び終えた栞那は、ダイニングテーブルに用意された食事に目を輝かせる。
「味噌汁とすまし汁なら、どっちが良かった?」
「え?……どっちも美味しいはずだから、どっちでも♪」
「そっか」
「あっ、これ白味噌でしょ!」
「ん」
「やったぁ!」
「この前のふろふき大根、結構気に入ってたみたいだから」
「うちは母親の実家が三重だから、基本伊勢の八丁味噌なの。だから、食卓に白味噌が上がることがなくて、京都に修学旅行で行った時に衝撃を受けて。働くようになってからは、メニューにあったら食べるようになったかな」
「自宅で白味噌料理するっていうのかと思った」
「あぁ、無理むり。味噌煮込みなら作れるけど、沸騰させずにとか、そんな神経使う料理は向いてない」
「プッハハハッ、栞那らしいな」
「どーせ、料理なんて向いてないもん」
「はいはい、冷めるから食べて」
「じゃあ、遠慮なく!いただきます」
「いただきます」
久々に彼女の笑顔を間近で眺め、仕事の疲れもぶっ飛んでゆく。
美味しそうに次々と口に頬張り、“美味しい、美味しい”と連呼する彼女に、本当に癒される。
「なぁ」
「……ん?」
「何で、連絡して来なかったの?」
「……いっくんだって、して来なかったじゃない」
「まぁ、そうだな」
「いっくんは何で?忙しくて、する暇もなかったの?」
「いや、するつもりなら出来たけど」
「……じゃあ、何でしなかったの?」
「質問を質問で返すなよ」
「……狡い」
リスみたいに頬を膨らませながら、ムスッと可愛らしく口を尖らせた。