鬼社長の迸る視線に今夜も甘く絆される

「私より仕事量が多いのを知ってるし、年度末で超激務なのも分かってるから、何となくし辛かったのはある」
「……ん」
「だけど、それだけじゃない」
「……ん?」
「すっごく逢いたかったけど、いっくんから言って欲しかったの。『逢いたい』だとか、『声聞きたい』だとか」
「っ……」

何だよ、それ。
可愛すぎんだろ。

昔から真っすぐすぎて、我慢しがちな彼女。
いつもズバズバと言うのに、ここぞの時は口を噤んでしまって。
自己消化みたいな感じに、感情そのものを無かったことにしようと変に気を使ったり。

そんな不器用なとこも変わってなくて。
それすらも、愛おしい。

「俺的にはもっと頼って欲しいというか、飢えて欲しかったんだけど」
「飢え……っ」

俺の言いたいことは伝わったみたい。
普段は表情に乏しい彼女が、一瞬で頬を赤らめ動揺してる。

そうそう、そういう顔が見たかったんだよ。

「ごめん、捻くれてて」
「……私も同じだから」

自然と絡み合う視線が優しくて。
中学生みたいな恋愛が、殊の外心地いい。

「明後日からまた暫く出張だから」
「どこに行くの?」
「エジプトとアメリカ南西部。お土産何がいい?」
「また凄い所に行くんだね」
「天然コットンの専属契約を取る為の出張だから」
「社長って、そんなこともするんだね」
「……そう、だな。俺じゃなくても契約は取れるだろうけど、俺が自分の目で見極めたいから」
「いっくん、ストイックすぎるもんね」

こんな風に仕事の話を詳しくしたことがなかった。
意外にもそれが新鮮で、会うことを躊躇ってた自分が恨めしい。

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