クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
その足で、時東さんのところに行って、声を掛けた。
「時東さん、ありがとうございました。とても勉強になりました」
「それは良かった。あっ、来週の週末、税理士法人に同行する予定してて」
「私でいいんでしょうか・・・」
「皆、1度は連れて行っててね。笠間さんはまだだったから」
「それでしたら、お願いします」
「あぁ、また声を掛けるよ」
「はいっ」
やったぁ!やる気が出て来た!
溜まっていた月次の仕事、今日中に済ませよう!

遅くなって、残っているのは時東さんと私だけ。
聞きたい事があって、時東さんの席に向かった。
「終わったか?」
「はい。1つだけどうしたらいいか分からなくて。お話していいですか?」
「いいよ」
「あの、」

話をしようとしたその時、
「あらっ、丁度良かった。お話中にごめんなさいね。時東さん、ちょっと大切な話があって、いいかしら」
2人の間を裂くように、武郷さんが寄ってきた。
「今、急ぎの話をしていますから、後にして貰えますか」
「今がいいのよ。ねぇ、笠間さん、いいでしょ?」
「あっ、はい。時東さん、明日で大丈夫ですから。私、お先に失礼します」
「あ、あぁ・・・分かった」
武郷さんは、私に不敵な笑顔を向けて、2人は会議室に向かった。
何だろう。胸がざわざわする。
私は2人の後ろ姿を見送り、帰る準備をして、部屋を出た。

翌日は用事があって、早めに帰ろうと「お先に失礼します」挨拶をして部屋を出た。
部屋を出ると、前から歩いてきた武郷さんが、私の前に立ち止まった。
「最近、時東さんと仲がいいわね」
「い、いえ、そんなこと・・・色々教えて貰ってるだけで」
「そう」
一瞬冷ややかな目で蔑むように見つめられたけど、直ぐに、にやけた顔つきに変わった。
< 15 / 115 >

この作品をシェア

pagetop