クールな上司は捜し人〜甘愛を運ぶ幼き想い出
【動き出す2人の愛】
約1ヶ月ぶりに来た広大さんの家。
「ごめん、片付ける時間がなくて、適当に座って」
広大さんがソファにあった書籍やネクタイを片付けて、座れるスペースがようやく出来た。
いつも綺麗に片付いていたのに・・・
今は、ベッドの上も本だらけ。
テーブルにも、ノートや本が散乱してる。
職場も家も、きっちり整っていた広大さんとは、違う人の生活感だった。

「びっくりしたか・・・事務所で寝て朝帰って来て、また直ぐに出掛ける日が続いていたんだ」
疲れ切った横顔が、どんな生活をしていたか分かる。
こんなに疲れていたのに、私に会いに来てくれた。
それなのに、私は桜子さんに嫉妬して、大倉さんにドキドキして・・・
もっと早くに広大さんに声を掛けていれば・・・

「あの、広大さん」
「ごめんな。今から片付けるから」
「いえ、このままでいいんです」
私は広大さんを抱きしめて、
「眠ってないんでしょ。少し横になってください。傍に居ますから」
その言葉に、広大さんはしばらくじっとしていた。
「碧に抱きしめられたらホッとして、睡魔が襲って来るよ。少しだけいいかな?」
「もちろんです」
「じゃあ、ここに座って」
私をソファに座らせると、膝の上に頭を乗せ、横になった。
「ねぇ・・・1時間後に起こして・・・」
「はい。起こしますね。あっ、やっぱりベッドに行った方が・・・」
顔を覗き込むと、静かに寝息を立て、もう眠っていた。
キッチンには、ワインの空瓶が置かれている。
普段呑まないのに。
もっと早くに、無理にでも来てたら良かったですね。
優しく頭を撫でた。

それにしても、難しそうな本ばかり・・・
起こさないように、テーブルにある本を手に取った。
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