秘密の夏。それを恋と呼ぶなら。

君の味がする



 その日を境に、覗いている僕を彼女が呼ぶようになった。こちらを見もしないのに、ドアの影に隠れている僕の存在に気づくのだ。読書をしているときや机に向かって勉強しているとき、庭を窓から眺めているときには呼ばれない。僕を呼ぶのはいつも決まっていた。

「こっちへ来て。光輝くん」

 呼ばれた僕は、いつもの位置に、椅子に腰掛けている彼女の斜め前、そこが僕の定位置だった。そこに立って彼女を見つめる。彼女の手が膝の上まで、太もものあたりまでスカートをたくし上げ、内ももへ滑り込むのを見る。そんな僕を、手をゆっくり動かしながら彼女が見つめる。胸に触り、スカートの奥の腿の中心を触り、はぁっ、と、かすかなため息をつく。秘密の遊戯の終わりにはいつも

「内緒だから。誰にも言ってはだめ」

 僕の目を見つめながらささやいた。

 でもある日、変化が訪れた。定位置で立ち尽くす僕の腕を捉え、彼女がこう言ったのだ。
< 15 / 50 >

この作品をシェア

pagetop