秘密の夏。それを恋と呼ぶなら。

その吐息は甘く切なく



 生まれつき体が弱くて、状態が悪くなったら病院へ入院し、快復すると家に戻ってくる。その繰り返しだから、あまり学校へも通えていない。そんな事情でも成績は悪くない。でも、だから友人もできない。伯父さんは静かな声で僕に教えてくれた。

 彼女のことを思い出すとき、真っ先に浮かぶのは、いつも着ていた丈の長い白いワンピースだ。長い綺麗な髪がほっそりした肩にかかり、白い足がワンピースの裾から伸びていた。色の白い小さな顔。笑ったのは見たことがない。大きな目で見つめられると、いつもどきどきした。そして…。

 家の二階には、僕と母が暮らす部屋、それに彼女の部屋があった。入り口のドアは、風を通すためなのか、いつも少し開いていた。僕はしばしば、ドアの隙間から彼女の部屋を覗いた。気づかれないように、そうっとだ。
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