秘密の夏。それを恋と呼ぶなら。
 せめて入院したことを聞いていたら、絶対にお見舞いに行ったのに、何があっても絶対にだ。どうして。どうしてなんだよ。

 大人たちに無理矢理に黒い服を着せられ、電車に乗り、葬儀の会場へ。そこは、尖った高い屋根の先端に十字架のある建物だった。キリスト教の教会だ。中に入ると花がいっぱいあった。とても広い。人もいっぱいいた。たくさんの花が飾られた立派な段の上に彼女の写真があった。写真の彼女は笑っていたけれど、あの日、僕に見せてくれて笑顔の方が百万倍もすてきだった。綺麗だった。可愛かった。

 優しい顔の神父さまがやって来て、荘厳なオルガンが鳴り、周囲の大人たちが知らない曲を歌う。讃美歌らしい。
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