秘密の夏。それを恋と呼ぶなら。

その声が僕の名を呼んだ

 その日の夜は、なかなか寝付けなかった。目をつむると昼間見た光景が浮かんでくる。するとまた股間が固くなってしまい…考えるのは彼女のことばかりだった。よく知らない彼女を、沙耶のことを。

 数日後、僕はまたも、彼女の部屋を覗いていた。その前日もその前の日も、覗き見をしていたのだけれど、彼女は庭を眺めたり、本を読んだりして、あの妖しい行為はやらなかった。でもその日は、期待に満ちた僕がこっそり見守るなか、椅子に真っ直ぐに腰掛けた彼女が、彼女の手がそろそろと自分のスカートをめくり始めた。白い素足があらわになる。

「ねえ。そこにいるんでしょう」

 急に彼女が喋った。僕に背を向けたままで、まくり上げたスカートの中に入れた手もそのままで。

「ねえ。光輝(こうき)くん」

 はっ。えっ。
 名前を呼ばれた。
 僕の名を呼んだ。
 まさか。
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