最強ヴァンパイアの柊くんに囚われて溺愛、溶かされる
再会

脱走




(あと少し……もうちょっとでこの学園からも…あの人からも逃げられる。)


廊下にある目の前の小さい窓とその向こうにある暗い空を見上げる。

最後の関門。外にある塀にこの窓から飛び乗るだけだ。

はやる気持ちを落ち着かせながらジャンプして窓の縁に脚をかける。かなり細くて不安定だがこれしかない。



「……うわっ!」



もう片脚を上げたところで、もともと乗っていた脚の体制が崩れ、滑り落ちる。幸いここは一階。そのまま背中から落下しても死にはしない。

痛みに備えて思わず目をつぶった……のだが、その衝撃がくることはなかった。



「ひぅっ」



一瞬お腹が潰されたのかと思った。

圧迫感。

投げ出された手足がぷらぷらとする。

お腹に回った見慣れた腕。私より太くて筋肉があって、私をぎゅっと後ろから抱きしめるように受け止めていた。

ひゅっと喉がなった。


こんな夜更け、真っ暗な中、まさか窓から落ちる私を受け止められる人なんていない。

ーー私を探す彼、柊以外は。



「つむぎ」



夜の闇を溶かすように甘くて低い声が囁かれたことにより確信付けられた。

ああ、結局捕まってしまった。


彼は私の反応がないのをそのままに、私が転げ落ちるはずだった地に静かに下ろした。

震える脚で彼の方を振り返りながらも、身長の高い彼の顔なんて見ないようにして一歩、一歩、後ずさる。

でもついにトンなんて音がして。
私を嘲笑うようにして私の背が壁についた。

彼が今どんな顔をしているのか見たくない。

怖い。
じわりと自然に涙が浮かんで、目に水の膜が張る。


目の前の彼がため息を吐くのが聞こえた時、既に私が必死に逃げた距離を一歩で縮めていた。


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