「好き」と言わない選択肢
やっぱり……
彼の歓迎会だったが、私はいつも通り適当な言い訳をして断って帰ってきてしまった。礼儀知らずと思われても仕方ない。
せめて、謝るべきなのだろうが……
「主任こそ、ご自分の歓迎会なのに、こんなところに居らしていいんですか?」
私は彼を見ずに言った。
「こんなところで、主任なんて呼ぶなよ。歓迎会は顔だけ出してきた」
「主任は主任ですから」
「ビール下さい」
「はーい」
忙しく動くおばさんの声が返ってきた。
私は立ち上がると、カウンターの奥に行き、サーバーからジョッキに生ビールを注いだ。
「どうぞ」
彼の前に、ジョッキを置いた。
「ああ、ありがとう」
週末のこの時間は、店が混雑する。拓真兄ちゃんも居ない。彼の隣りに座って飲むより、お店を手伝った方が気楽だ。
トレーを手にして、空いた席の片付けを始めた。
「生中一つと、レモンサワー一つ」
隣のテーブルから声がかかった。
「はい」
お皿を乗せたトレーを持って、カウンターに入る。
「さっちゃん、ありがとうよ。疲れているだろうから、無理しないでなぁ」
おじさんが、ちらっとこっちを見て、申し訳なさそうに言った。
「うん。大丈夫だよ」
グラスにレモン果汁を入れた。
視線を感じる。彼が見てるのが分かるが、気付かない振りをした。
レモンサワーと生ビールを持って、カウンターを出た。
「お待たせしましたー」
少しニコリとして、テーブルに置く。そうは言ってもおじさん達の店だ、少しくらいは愛想は良くしないと店の評判にかかわってはいけない。
「ありがとね。休み休みでいいから。全く、拓真は何処に行ったんだろ?」
おばさんが、プリプリながら言った。そんなおばさんの姿に、ふっと笑みが漏れた。
「はーい。適当に休むから心配しないで」
ガラガラとドアが開いた。
「五人だけど、座れます?」
「はーい。今、空けますね」
私は、急いでテーブルを片付けた。
「ごめんごめん、遅くなった」
拓真兄が店に入ってきたのは、私が手伝い始めてだいぶ経ってからだ。
彼の歓迎会だったが、私はいつも通り適当な言い訳をして断って帰ってきてしまった。礼儀知らずと思われても仕方ない。
せめて、謝るべきなのだろうが……
「主任こそ、ご自分の歓迎会なのに、こんなところに居らしていいんですか?」
私は彼を見ずに言った。
「こんなところで、主任なんて呼ぶなよ。歓迎会は顔だけ出してきた」
「主任は主任ですから」
「ビール下さい」
「はーい」
忙しく動くおばさんの声が返ってきた。
私は立ち上がると、カウンターの奥に行き、サーバーからジョッキに生ビールを注いだ。
「どうぞ」
彼の前に、ジョッキを置いた。
「ああ、ありがとう」
週末のこの時間は、店が混雑する。拓真兄ちゃんも居ない。彼の隣りに座って飲むより、お店を手伝った方が気楽だ。
トレーを手にして、空いた席の片付けを始めた。
「生中一つと、レモンサワー一つ」
隣のテーブルから声がかかった。
「はい」
お皿を乗せたトレーを持って、カウンターに入る。
「さっちゃん、ありがとうよ。疲れているだろうから、無理しないでなぁ」
おじさんが、ちらっとこっちを見て、申し訳なさそうに言った。
「うん。大丈夫だよ」
グラスにレモン果汁を入れた。
視線を感じる。彼が見てるのが分かるが、気付かない振りをした。
レモンサワーと生ビールを持って、カウンターを出た。
「お待たせしましたー」
少しニコリとして、テーブルに置く。そうは言ってもおじさん達の店だ、少しくらいは愛想は良くしないと店の評判にかかわってはいけない。
「ありがとね。休み休みでいいから。全く、拓真は何処に行ったんだろ?」
おばさんが、プリプリながら言った。そんなおばさんの姿に、ふっと笑みが漏れた。
「はーい。適当に休むから心配しないで」
ガラガラとドアが開いた。
「五人だけど、座れます?」
「はーい。今、空けますね」
私は、急いでテーブルを片付けた。
「ごめんごめん、遅くなった」
拓真兄が店に入ってきたのは、私が手伝い始めてだいぶ経ってからだ。